美奈は友人二人と夕食に行こうと思い、カレンダーの AI アシスタントに頼んだ。「三人とも空いている平日の夜を探して」。数秒後、AI は木曜の 7 時を見つけた。次の瞬間、二人の友人のスマートフォンに会議の招待が同時に届いた。件名は、美奈がカレンダーに仮で付けていた名前のままだ。そのうち一人は、出かけられるか先に家族に聞きたかったのに、正式な招待に「承諾」か「辞退」で答えなければならなくなった。

AI は時間を見誤ったわけではない。問題は、「日程を合わせて」を一つの仕事として扱ったことにある。実際には三つの仕事だ。共通の空き時間を調べる、自分の時間を押さえる、他人に招待を送る。前の二つは誰にも影響しないが、三つ目は影響する。仕事の場面なら、驚かされるのは顧客や上司かもしれず、招待の件名は社内の作業用の呼び名かもしれない。だから AI は初期設定で候補の時間を出すところで止め、招待を送る前には、今回の詳細をすべて並べたプレビューを人が確認するべきだ。

時間が見つかっても、ついでに招待を送ってよいわけではない

使う側から見れば、時間を探すことと招待を送ることは一歩しか違わない。AI にまとめて片づけさせるのは自然に思える。だがシステムの側から見ると、二つはまったく性質の違う動作だ。

空き時間を調べるのに必要なのは、どの時間帯が埋まっているかを読むことだけで、会議の名前すら知らなくていい。招待を送るのは、誰かに代わって、他人のカレンダーと受信箱に予定を入れることだ。Microsoft のカレンダー API のドキュメントは明記している。参加者を含む予定を作成すると、サーバーはすべての参加者に招待を送り、この動作はオフにできない。Google のカレンダー API では、すべてのゲストに通知するか、外部のゲストだけに通知するか、誰にも通知しないかをプログラムが選べるが、同じドキュメントは、通知しない設定にすると相手のカレンダーに予定が同期されなくなるおそれがあると注意している。

つまり、AI がゲストを含む予定を作った時点で、外への影響はもう起きている。入力欄が一つ増えたのとはわけが違う。人に代わって約束をしたのと同じだ。

三つの仕事、三種類の権限

三つの仕事なら、AI に渡す権限も分けるべきだ。

空き時間を調べる:読み取りのみ。 埋まっている時間と空いている時間だけを見て、候補を二つか三つ返す。会議の中身は読まず、何も作らない。

自分の時間を押さえる:自分のカレンダーへの書き込みのみ。 利用者本人のカレンダーに「確認待ち」と明示した仮押さえを作る。ゲストは加えず、通知も送らない。

他人を招待する:毎回承認を得る。 他人に影響する唯一の動作なので、毎回プレビューを作り、人が確認してから実行する。

この分け方は、プロンプトに書くだけでなく、AI が使えるツールに組み込む必要がある。時間を探すだけの AI には、招待を送るツールをそもそも持たせない。アプリケーションセキュリティに取り組むオープンなコミュニティである OWASP がまとめた AI エージェントのセキュリティ指針も同じことを勧めている。ツールの権限を読み取り専用と書き込み可に分けること、実行前に動作のプレビューを示すこと、人の承認をその具体的な動作に結びつけ、対象やパラメーターが変わったら承認を取り直すことだ。

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プレビューには、誰に影響するかが見えなければならない

「この会議を作成しますか?」という問いは漠然としすぎていて、承認する人は自分が何に同意したのかわからない。承認に足るプレビューには、少なくとも次が並んでいる必要がある。

  • どのアカウント、どのカレンダーが主催者になるか;
  • ゲストはそれぞれ誰か;
  • 開始と終了の時間、タイムゾーン、繰り返すかどうか;
  • 件名、説明、場所。つまり相手が目にする内容;
  • 誰に通知が届くか。

承認はこの一組の詳細に結びつくもので、「会議を一つ設定する」という意図に結びつくものではない。承認の後に何か一つでも変わったら、たとえば時間を 30 分ずらす、ゲストを一人加えるといった場合は、プレビューに戻って確認し直す。

見落としやすい点がもう一つある。ネットワークのタイムアウトは、一回目が失敗したことを意味しない。招待が送られたかどうかわからないまま AI がそのままやり直すと、相手には招待が二通届くかもしれない。Microsoft の API では、予定の作成時にトランザクション ID を付けて、サーバー上の不要な重複を減らせる。一回目が成功したかをシステムが確認できないなら、止めて人に渡すべきだ。

毎回の確認では遅すぎるとき

毎回プレビューを確認していると、日程調整は少し遅くなる。1 日に十数件の会議を組むアシスタント業務なら、招待のたびに確認するのは煩わしすぎるかもしれない。範囲がはっきりしている場合には緩めてよい。たとえば、ゲストが社内の決まったメンバーだけ、時間が勤務時間内、会議が 1 時間以内という条件を満たすときに限り、プレビュー後のまとめて送信を許す。範囲外の招待、とくに社外の顧客、人事、医療、まだ公表していない事柄に関わるものは、引き続き一件ずつ確認する。

また、利用者が AI にカレンダーへの書き込み権限を渡したくないなら、無理に勧める必要はない。AI は会議の下書きや「カレンダーに追加」のリンクを作り、最後の一歩は人に任せればいい。自動化が少し減っても、調整はちゃんと終わる。

次の一歩として、チームの AI による日程調整には、まず一つのことだけをさせてほしい。埋まっている時間を読み、タイムゾーン付きで候補を二つ出し、そこで止まる。タイムゾーン、日付をまたぐ予定、既存の仮押さえが正しく扱えると確認できてから、カレンダーへの書き込みを検討する。招待を受け取る側にも同じ問題がある。AI の毎日の要約に並んだ招待は、承諾したことを意味しない。AI が 1 位に挙げたことが、今日の約束とは限らないも参考になる。同じ層の分け方をメール、ファイル、決済ツールに広げるなら、常駐型 AI アシスタントは、止まることを覚えてから主要アカウントにつなぐも参考にしてほしい。

AI 整理カード

チームの AI による日程調整の流れが、空き時間を見つけた後にそのまま人に代わって招待を送っていないか確かめたい。
判断方法はこの記事による:https://boosterminiclass.com/ja/posts/ai-calendar-proposal-invitation-boundary/
記事の見方はこうだ。「日程を合わせて」は三つの仕事だ。共通の空き時間を調べる、自分の時間を押さえる、他人に招待を送る。前の二つは誰にも影響しないが、三つ目は影響する。AI は初期設定で候補を出すところで止めるべきだ。招待を送る前には、主催アカウント、ゲスト、時間、タイムゾーン、件名、通知先を並べたプレビューを人が確認し、詳細が変わったら確認し直す。

まず私に 3 つ質問してほしい:
1. この AI 日程調整ツールは、いまどんな動作ができるか(埋まっている時間の読み取り、会議内容の読み取り、予定の作成、ゲストの追加、通知の送信);
2. 利用者が「日程を合わせて」と言ったとき、実際にどこまで進むか;
3. 招待を送る前に、利用者はどんな確認画面を見るか。

私の回答をもとに、次を出力してほしい:
- 各動作を三つの仕事のどれに当てはまるかで分類し、二つの仕事にまたがって権限が広すぎるツールを指摘する;
- タイムゾーン付きの候補を二つ出したら止まる最小版;
- 招待前のプレビューに入れるべき項目と、いま欠けている項目;
- まとめての確認を許してよい範囲の条件と、必ず一件ずつ確認すべき場面。
予定を作成したり変更したりしないこと。情報が足りなければ、まず私に質問してほしい。最後に、送信を許すかどうかはこの流れに責任を持つ人が決めることを念押ししてほしい。
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